資産配分のポートフォリオは、単なる数字の集合でない。
そこに思想、設計があり、美学がある。
とりわけて資産配分は「構造」として捉えることで、リスクとリターンのバランスを超えた意味を持ち始めるのだ。
資産運用の構造美は、無駄なく、偏りなく、そして未来への余白を残した設計思想が必要だ。
8資産均等型の骨格美:分散の完成形か、過剰か
「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」は、国内外の株式・債券・REIT・新興国資産をそれぞれ12.5%ずつ均等に配分したファンドだ。
地理と資産クラスと通貨の三軸で分散されている。
構造としてシンプルで非常に美しい。
一方、「過剰な分散」「REITのボラティリティ」「新興国債券の信用リスク」など、構造の中に揺らぎも多い。
これは、“多機能型設備”のようなもので、冗長性と複雑性が共存している。
暗号資産という火山性アセット:0.5資産の哲学
暗号資産は、制度外に存在する“火山性アセット”みたいなもの。
ボラティリティはとても高く、相関性は不安定。
しかし、未来のポートフォリオに欠かせない素材かもしれない。
現状では日本の投資信託制度では組み込みが難しい。
しかし、米国ではビットコイン現物ETFが承認され、資産形成の一部として認識され始めている。
この“0.5資産”は、構造の外縁に置くべき未来の鉱脈かもしれない。
ただ実際に組み込むならば、全体の1~5%くらいが適当だろう。
8.5資産均等型の設計図:冗長性と遊び心の融合
ここで提案するのが「8.5資産均等型」という構造だ。
オルカン+4資産均等型をコアに、8資産均等型と暗号資産をサテライトとして配置する資産運用の型を示してみよう。
比率例(構造美重視):
ファンド構成 | 割合 | 役割 |
---|---|---|
オルカン(全世界株式) | 50% | 成長エンジン |
4資産均等型(株+債券) | 40% | 安定の骨格 |
8資産均等型(REIT含む) | 8% | 分散と揺らぎ |
暗号資産(BTC/ETHなど) | 2% | 非線形リスクと未来性 |
この構成は未来の拡張性を見越した設計になっている。
まだ使われていないかもしれないが、必要になったときにすぐ機能する。そんな余白を入れ込んだ設計になっている。
都市インフラに学ぶ:構造美と拡張性の両立
災害対応のために設けられた予備電源、通信の冗長回線、未使用の地下配管。
都市のインフラには、通常時には使われないことを前提とした冗長性がある。
ポートフォリオも同じ。すべての資産が常に機能する必要はない。
むしろ、余白がもしものときのしなやかな予備電源であり冗長回線、地下ダンジョンとして、構造全体のリスクを軽減する。
8.5資産均等型は、そんな思想を投資に持ち込む試みになっている。
さて具体的に各資産アセットの比率を再確認してみよう。
よし、では「オルカン+4資産均等型+8資産均等型+暗号資産(2%)」という構成における各資産アセットの比率を具体的に計算してみよう!
前提の比率構成(全体100%)
ファンド構成 | 割合 |
---|---|
オルカン(全世界株式) | 50% |
4資産均等型 | 40% |
8資産均等型 | 8% |
暗号資産(BTC/ETHなど) | 2% |
各ファンドの中身を展開してみると…
オルカン(のぞく日本、50%)
- 先進国株式:約45%
- 新興国株式:約5%
4資産均等型(40%)
- 国内株式:10%
- 先進国株式:10%
- 国内債券:10%
- 先進国債券:10%
8資産均等型(8%)
- 国内株式:1%
- 先進国株式:1%
- 新興国株式:1%
- 国内債券:1%
- 先進国債券:1%
- 新興国債券:1%
- 国内REIT:1%
- 先進国REIT:1%
合計アセット比率(全体100%)
資産クラス | 比率(概算) |
---|---|
国内株式 | 11% |
先進国株式 | 56% |
新興国株式 | 6% |
国内債券 | 11% |
先進国債券 | 11% |
新興国債券 | 1% |
国内REIT | 1% |
先進国REIT | 1% |
暗号資産 | 2% |
この構成の場合、株式比率は約73%、債券が約23%、REITが2%、暗号資産が2%というバランスになる。
これはまるで、都市の骨格(株式)に通信網(債券)と文化施設(REIT)と未来型モジュール(暗号資産)を組み込んだような感じがする。
まとめ:構造美は完成ではなく、進化の余白
構造美とは、完成された形ではなく、進化の余白を持つものといえる。
8.5資産均等型は、制度や市場、技術の変化に応じて形を変える、まるで“仮設足場”のような存在だ。
暗号資産が日本の制度に組み込まれる日ももうまじかかもしれない。
REITがより安定的な収益源になるかもしれない。
そのとき、ポートフォリオは静かに形を変える。その美しいさまを保ったまま、自動的に進化していくのだ。
提案として、この案をさらに進化させた、8.7均等アセット番がある。
8.7サテライトアセット修正後の構成案(100%)
ファンド構成 | 割合 | 役割 |
---|---|---|
オルカン(全世界株式) | 50% | 成長エンジン |
4資産均等型 | 38% | 安定の骨格 |
8資産均等型 | 8% | 分散と揺らぎ |
暗号資産(BTC/ETHなど) | 2% | 非線形リスクと未来性 |
金(ゴールド) | 2% | インフレ耐性と安全資産 |
修正版各アセット比率(概算)
資産クラス | 比率 |
---|---|
国内株式 | 約11% |
先進国株式 | 約56% |
新興国株式 | 約6% |
国内債券 | 約11% |
先進国債券 | 約11% |
新興国債券 | 約1% |
国内REIT | 約1% |
先進国REIT | 約1% |
暗号資産 | 2% |
金(ゴールド) | 2% |
なぜ金を加えるのかというと?
- インフレ耐性:通貨価値が下がっても金は価値を保ちやすい
- 市場の混乱時に強い:株式や債券が下落しても、金は逆に上がることがある
- 構造の“静的安定性”:暗号資産と対照的に金はしっかりした安定性を持つ