機関投資家だって損切りルールを変えちゃうのだ – フランス国債格下げ

Even Institutional Investors Bend Their Rules – France's Sovereign Downgrade 投資

「一度決めた損切りのルールは途中で都合よく変えてはいけない」というのは投資のルールとしてよく語られる

それなのに、なんと巨大な資金を動かす機関投資家も自ら損切りルールを変えるときがあるのだ。

フランス国債が格下げされた

フランス国債が2025年、格下げされた。

その理由は、フランス国家の財政不確実性と政治の不安定さが重なった要因が大きい。

  • 政府債務の水準が高く、今後も上昇が見込まれる
    赤字が拡大し、2027年には対GDP比で121%に達する予測も
  • 政治の不安定化
    過半数政党がおらず、議会の分裂や首相不信任投票などが続く展開
  • 財政再建ままならず、財政運営の硬直性
    年金改革が止まり、税収対GDP比はすでに高水準、制度再建の遅れ

これにより格付け大手2社が格下げして、平均ダブルA以上から脱落した。

フランス国債を大量保有する機関投資家にとって大問題

機関投資家が運用する場合、厳格なルールが設けられ、それに基づいて運用される。

国債の場合、「AA格以上」を投資基準とするファンドが多い。

それなのに、今回フランス国債がその基準から脱落した。

欧米のなかで平均ダブルA以上は、イギリス、ドイツ、フランスだったわけで、機関投資家も相当額のフランス国債を保有している。

もしここで基準から外れたからと大量保有するフランス国債が売り始めたら、債券全体にその売りが波及し、国債全面安、さらには債券・株式・外国為替のトリプル安をまねきかねない。

世界に混乱を巻き起こすだけでなく、自らが運用する資産の大きく減る可能性が大きい。

売りたくても売ったら大惨事の、売れない状況に陥ってしまった。

そこで、ブラックロックやステートストリートはちょっとまずいから損切りルールを柔軟に運用しちゃおうかと言い始めた。

なんと巨大な機関投資家だって、ときには損切りルールを変更することがあるのだ。

損切りルールを途中で変えるのは悪手みたいによく言われるけれど、機関投資家だってやるのだ。

主要国の国債格付け一覧 2025年

こちらが2025年時点でのG7各国の国債格付けを主要格付け会社3社(S&P、ムーディーズ、フィッチ)で比較した一覧になる。

国名S&Pムーディーズフィッチ
日本A+(安定的)A1(安定的)A(安定的)
アメリカAA+(安定的)Aa1(安定的)AA+(安定的)
イギリスAA(安定的)Aa3(安定的)AA-(安定的)
ドイツAAA(安定的)Aaa(安定的)AAA(安定的)
フランスA+(ネガティブ)Aa3(安定的)A+(安定的)
イタリアBBB+(安定的)Baa3(安定的)BBB(安定的)
カナダAAA(安定的)Aaa(安定的)AA+(安定的)

※出典 主に2025年5月〜10月時点の各社発表による

ドイツとカナダだけが3社すべてで最上位格付け(AAA/Aaa)を維持している。

アメリカはムーディーズでも格下げされて最上位から陥落したばかり。

いまはどの国も財政赤字や利払い負担が重くなってきていて、この先の格付け維持はなかなか大変そうだ。

ダブルA以上縛りだと、どこの国債も持てない時代が来てしまうかもしれない。

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