12月下旬、株式市場には静かに“歪み”がある。
それは、投資家が税金を減らすために行う「節税売り」。
含み損のある銘柄を年末に売却して税負担を軽減しようとするこの行動は、一時的な需給の崩れを生み出すのだ。
そしてその歪みの中には構造的なチャンスが。
特に注目すべきは、高配当銘柄で株価が軟調なもの。
配当利回りが高くても、年初と比べて株価が下がっていれば含み損を確定させる動機が生まれやすい。
こうした銘柄は12月中旬から売られ、年末年明けに買い戻される“逆張りの果実”になりやすい。
節税売りが出やすい業種とは?
節税売りの対象になりやすいのは、以下のような特徴を持つ銘柄。
- 高配当利回り(3.5%以上)
- 業績変動が大きく、株価が軟調に推移
- 年末時点で含み損を抱えている投資家が多い
この条件に当てはまりやすいのが今年2025年は、海運業と鉄鋼業、輸送機器の業種だ。
トランプ関税の影響をもろにうけた。
海運業:配当は魅力、でも株価は波打つ
- 川崎汽船(9107):配当利回り5.42%。2025年は株価はレンジに
- 日本郵船(9101):利回り4.40%。市況連動型で需要減・運賃下落が響いた
- 商船三井(9104):利回り3.97%。増配実績もあるがさらなる減配のリスクも
景気敏感株である海運株は、配当の高さと業績の不安定さが同居する。
そのため節税売りの対象になりやすい。
なかでも商船三井は、2025年株価調整が続いており、年末に売られる可能性が高い。
鉄鋼業:景気敏感で売られやすい
- JFEホールディングス(5411):配当利回り4.52%。中国需要の減速
- 日本製鉄(5401):利回り3.77%。買収から株価は調整気味
- 神戸製鋼所(5406):利回り4.40%。3月以前まで回復できてない
鉄鋼株はトランプ関税の影響、景気敏感セクターとして節税売りが出やすい。
ほとんどの鉄鋼株が株価が年初から下落傾向にあり、含み損を確定させる動きが出る可能性がある。
権利付き最終日との交差点
2025年の権利付き最終日は12月26日(金)。
この日までに株を保有していれば、配当の権利が得られる。
つまり、節税売りで株価が下がった直後に拾えば、配当権利も確保できるという構造的なチャンスがある。
このタイミングで注目されるのが、12月決算の高配当銘柄。日経平均採用銘柄では少ないが、構造的に似た銘柄として以下が挙げられる:
- THK(6481):配当利回り5.93%。機械系で業績変動あり
- DIC(4631):利回り5.50%。化学系で株価は安定も年末に需給悪化しやすい
拾いどきの見極め方
節税売りの“歪み”を狙うには、以下の視点が重要だ:
- 株価が年初来安値圏か?
- 配当利回りが高く、来期も維持されそうか?
- 業績悪化は一時的か?
- 権利付き最終日までに反発の兆しがあるか?
これらを見極めることで、“売られすぎ”を拾う逆張り戦略が成立する。
構造美としての節税売り
節税売りは、単なる年末のテクニカルイベントではない。
それは、投資家心理と制度設計が生む“構造的な歪み”であり、そこにこそ美学がある。
まるで冬の森で、落ち葉の下に隠れた甘い木の実を見つけるように。
静かに待ち、動くときは一瞬で収穫する。
そんな投資の美学が、年末の市場には潜む。

